第7話あらすじ:診断
前回すでに診療所とその住人達は両刃の剣と言えるような波風の立たない暮らしの中にいた。人間関係は驚くほど調和がとれていたし、医者は治療者と言うよりやさしい養育者のようだった。急展開や溝にはまるような兆候すらなかったのに、イタリア人は「傷だらけのクロンボ」からセロハンに包まれた大麻をもらったことから、ドクター・ライフの出演者全員が騒動に巻き込まれることになってしまった。
第7話は、まるで、それまで淡々としていたナレーションが急に調子はずれで羽目を外したような様相だ。治療のプロセスが、疑心暗鬼、おののき、そして互いの励ましの場面に変わっていく。気持ちよく付き合えるのは相手に高いモラルを求めたりしない人間だ。多くは、イリーナのように自分たちは何か起こってもそれに関係がないと考えている。しかし、害のない遊び心だと黙認されていたことだが、イタリア人が診療所のバーで軽い麻薬を手に入れたことが原因で、関係がうまくいかなくなってしまった。

イリーナは、争いごとに首を出して共犯の疑いをかけられないよう距離をとって関わらないようにしていた。人付き合いが下手で引っ込み思案のイリーナが話せるのはイタリア人だけだった。イタリア人が言うには、クロンボから麻薬をもらう前はイリーナと二人で散歩していたそうだ。そして、イタリア人は無邪気にも、手に入った一服を父親に見せに来た。で、父親の手から渡った小さな包みの落ち着き先がナザラリエフ博士のデスクの上だったというわけだ。「これじゃ、一回分にも足りないだろうに」と博士。それでも参加者の心に何かが生じるには十分な量だった。
「私はまとも。治療のためでヤクを吸うために来たんじゃない」とイリーナは身の潔白を証明しようとする。断固とした言い方は、明らかに、膨らむ疑念をぬぐうためのもののようだ。一緒に車で出かけたのはだれかと疑われたのだから。「みんな、また会うかもしれないし、もう会うことはないかもしれない。手紙のやり取りはするかも。ドイツのことわざに『出会いは二度ある』というのがあるんだ」と言うのはヴィクトルだ。プロジェクトのなかでの非常事態は、猜疑心とパラノイアの初期症状を呈して終わった。

イタリア人自身は、麻薬をくれたというその事実は、自分がそれにふさわしい、どのグループからも尊敬される人間だからだ、そしてそれだけじゃないと説明する。実際、閉じ込められた状態では、どんな行動をするのか、親切かどうか、ということであだ名が付けられる。イタリア人は第7話のあと、『そそのかし屋』とか『秘密工作員』などと呼ばれたかもしれない。動揺した参加者からイタリア人の役割は、そういう風に理解された。彼は見栄を張るところがあって、何か勧められたら断ることができないし、健康を取り戻すチャンスを逃してはならないということさえ忘れているのだ。
「もしここでよくならなかったら、石を首にくくりつけてライン川に身投げする。しっかりしなきゃだめなんだ。オレたちの前にあるのは、ビスワ川の闘いだ、催涙ガスだ、戦車なんだ」
とヴィクトルがことばに力を込めている。医療従事者も不信感を抱いてもよさそうなのに、そうはならなかった。医者は自分の患者を麻薬中毒者として実験しているわけではない。それを思い出させてくれたのは心理学者で麻酔医のエリミーラ・サティベコワであり、その後、この問題はもう話題にのぼらなくなった。
本当に挑発行動があったのか、あるいはプレゼントにすぎなかったのか、それとも贈り物に見せかけただけだったのか。参加者は全員薬物摂取の有無を調べるため尿検査を受けることになった。許容範囲ではあるが、ある結果がイタリア人の尿に認められた。他の参加者に比べて感情の激しいアナトーリーは、罰としてイタリア人を20回打ちすえるべきだと主張した。だがあとで心の内を打ち明けた。「オレも怖いんだ。もしプロジェクトから外されたらと思うと」とアナトーリー。他の者と話していたプロジェクトの監督が「ここはオーラがあるよ、開放的なクリニックなんだ」とクリニックの伝統について教えてくれたが、それでもアナトーリーはよく分からないという顔をしていた。
医者たちの会議の席、博士が表明した。「もし、彼(イタリア人)が回りを煽るようなことがあれば、どうしようもない奴だ。グループの邪魔をしたら、たとえ、たった一人にでも迷惑をかけたら、出て行ってもらうしかない」と。挑発ゲームは終わり、各自がイタリア人の今後の運命を決めなければならない時がきた。イタリア人を勇気があるなどと持ち上げるどころか、全員がある行動に出るのだ。
ヴィクトルは短絡的に決定を下すのは問題だと思った。「オレたちにはあいつを放り出してしまうことはできない。そんなことをしたら明日にでもあいつはヤクをやりすぎてぶっ倒れてしまう」と、彼はグループの無関心派やイタリア人をリンチにかけろと叫ぶものたちに冷静になれと言う。しかし、しこりは残った。他の者の検査は陰性だったが、イタリア人は即刻退所の危機に瀕している。退所となれば、パパは頭をなでて褒めてはくれないだろう。




















