アルラン・ジュマタエッフ

アルラン・ジュマタエッフ

精神科医

医者の家に生まれたものだから、彼の将来の職業はあらかじめ決められていた。人間の外見と振る舞いを見ただけで、その人物が麻薬患者かどうか分かるようになった。

診療所の仕事とスポーツは両立させている。真剣に合気道に取り組んで8年、初段だ。合気道精神の柱の一つは「敵を敬え」、つまり「善は行わずとも、決して、悪をなすな」である。

忘れもしない1998年の当直の夜、彼のところへ「襲われる!ドクター、助けてくれ!」と言いながら、一人の患者がやってきた。彼は当時、犯罪組織のボスだった。結論を先に言ってしまえば、患者は、おそらく鎮痛剤と睡眠薬のせいで幻覚症状を起こしたのだ。しかしその時は、医者として患者に調子を合わせることにした。で、二人でそっと廊下に出て見てみると、本当に、廊下の突き当たりに自動小銃を手にした黒い人影が見えた。人影はこっちの方に向かってくる。二人とも恐怖で身がすくんだ。武器を持った人物がほとんどすぐそばまでやってきて初めて、それが患者の雇ったボディーガードだということが分かったのだった。

 

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